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カタカタ用語の末尾に長音符号をつけるかつけないかについては古くから議論されているところで、 昭和27年の国語審議会表記部会での審議に見られます。 その紛糾した議論は一応の決着を見ましたが、そこでの結論は "原則は長音符号をつける"、 必要に応じて省くこともできるといったもので、つまりはどちらでも良いという結論に なりました。
この際の裏話としてどこかで読んだのですが、その審議の際には化学関係者が長音符号を つけることに猛烈に反対し、その結果、どちらか一方に定めることが出来なかったという 経緯があります。
この審議を受けた新聞、報道、辞書などの各分野はほぼ原則どおりの規則を採用します。 NHKでは長音符号を省くことは誤りである、と明言もしています。JIS規格において どうなったかというと、これは学術技術等の各分野において対応がまちまちとなり、 上で述べたように化学分野などでは"省く派"で、情報処理分野がそれにならっている一方、 "つける派" も存在しています。また電気工学の学術用語集では、省くことを採用しつつ、 音節が短い場合はつけるといった折衷的な方式を作り出しています。
現行の内閣告示「外来語の表記」は平成3年のものですが、長音符号に関してはそれ以前 と比べてあまり内容は変わっていません。グレーなまま今日に至っています。
特定の技術分野や特に情報処理分野に身を置いていると "省く派" の方が当たり前で、 "つける派" に違和感を覚える方がいるかもしれませんが、広く全般に世を見渡して見ると むしろ "つける派" の方が(ひょっとすると圧倒的に)多数であるとも言えます。 そんな中、SONY や Microsoft が長音符号を "つける派" に鞍替えしました。 Microsoft が鞍替えしたことは影響力が大きかったのでしょう。ここのところ、なにやら 潮流が起きているのが現在ではないでしょうか。
表記の面ばかりを調べるだけでなく発音に着目した検討も必要で現に国語審議会でも行われています。 長音符号をつけなくても、実は皆さん、音を伸ばして発音していませんか? というものです。 発音と表記にもゆれ(ぶれ)があるのです。ということは何を示しているかというと、 特定の専門用語に初めて触れる人が長音符号を省いたその用語を見た際には、長音符号を つけずに発音するということです。明治期に summer はサンマーと表記されていましたが、 長音符号を省くことにするとサンマです。この用語のことを知らない人は秋刀魚と勘違い するかもしれません(?)し、秋刀魚を連想してクスッと笑うかもしれません。表記を定める際には どのように発音されるかという観点も実は必要ではないか、というものです。
私見では Microsoft の方向転換は大変良いことと思いつつ、すべてに長音符号をつけるわけでは ないため釈然としません。私は -er, -ar, -or に関してすべてつけるべきと考えています。 さらに -ture (adventure), -dure (procedure) もつけるべきと考えいます。 一方、勘違いしてはならないこととして、menu は従来も今も変わらずメニューで表記のゆれが 見られたことはないはずです。メニュと書くことは誤りです。また alpha など (イタリア語由来?, ギリシャ語由来?) では逆に長音符号をつけずにアルファとすることが普通で、 ここにアルファーという表記を持ち込むとややこしくなります。
要は一つの書籍、表現媒体、組織、分野など、あるいはその文字情報を発信する相手の如何に 応じて、一貫した表記統一を図ることが必要で、そうでないと "つける"語と "つけない"語が 別々に存在する別概念であるかのような状況を作り出し不適切です。統一するためには明確な ルールを築くか、あるいは用語集を細かく整備するかすることが理想といえるでしょう。