エンタープライズコンピューティングの分野において、この5年間で最も大きな変化の1つが「仮想化」です。メインフレームなどの大規模コンピュータでは以前から仮想化技術が使われていましたが、ハードウェアの高性能化により現在では一般的なPCサーバでも仮想化技術が使えるようになりました。仮想化はコンピュータリソースを“プール”として抽象化するために必須の技術となりつつあり、これをうまく導入することで企業は自社のリソースを効率よく分配することが可能になります。
一方、システム管理者にとって仮想化技術の導入は、管理レイヤの増加も意味します。管理レイヤが増えて管理の手間が増えるようでは、仮想化の導入メリットも半減してしまいます。そこでここではNECのブレードサーバ「SIGMABLADE」と管理ツールの「SigmaSystemCenter 2.0」(SSC)を用いて、仮想マシンシステムを構築する手順を紹介します。SSCは仮想化に対応した統合管理プラットフォームであり、物理的なサーバで動作するホストと仮想マシンで動作するホストを単一のコンソールから統一的に管理することが可能です。
今回構築するシステムでは、以下の2つの機能を実現することを目標とします。
なお、SSCは仮想化プラットフォームとしてVMware ESX ServerとCitrix XenServerの2つに対応していますが、今回はESX Serverを利用することにしました。作業内容にわずかな違いはあるものの、XenServerを利用する場合でも上記の目標は実現できます。ちなみにSSCの将来のバージョンでは、MicrosoftのHyper-Vにも対応する予定です。
今回構築するシステムの構成は以下のとおりです。
上記のように、2台のブレードサーバ上で3台の仮想マシンを運用します。仮想マシンは4台でも5台でもかまいませんが、仮想マシンの必要とするリソースが物理サーバのキャパシティを超えないようにサイジングには十分注意する必要があります。
管理サーバにはあらかじめVirtualCenterをインストールしておきます。また、DHCPサーバとIIS、ASP.NETもWindows Serverのインストールメディアからインストールしておきます。
一方、ブレードにはESX Serverをインストールし、仮想マシンの作成とOSのインストールを済ませておいてください。今回はマイグレーション(物理サーバ間での仮想マシンの移動)を利用する関係上、仮想マシンの構成ファイル群を共有ストレージ上に配置する必要があります。それとブレードにはSIGMABLADEおよびExpress5800の管理ツール「ESMPRO/ServerAgent」もインストールしておきます。このServerAgentは、ブレードの障害監視を行うために必要となります。
このほか、事前に済ませておく作業には以下のものがあります。これらの手順はこちらの記事ですでに説明していますので、詳しくはそちらを参照してください(下記のリンクをクリックすると当該作業の解説箇所が参照できます)。
なお、管理対象サーバのDPMへの登録は物理サーバと仮想マシンの双方で行う必要があります。同様にSSCエージェント(実際はDPMのエージェント)も物理サーバと仮想マシンの両方にインストールしてください。ESX ServerはLinuxベースなのでLinux版のエージェントをインストールします。一方、今回仮想マシンではWindowsを利用するので仮想マシンにはWindows用のエージェントをインストールします。