Uzumeプラットフォームは前述の通り、安価なハードウェアで気軽にオーディオ信号処理の実験を行えることを目標として開発されている。 想定するユーザーはDSPへの知識が薄いが、信号処理を試してみたいといった人々であり、ギター・エフェクタやシンセサイザを自作するアナログ回路設計者なども含む。 Uzumeプラットフォームが提案されたのは2010年の夏であったが、最初の試作コードがコミットされたのは2011年の秋になってからであった。
現在、オーディオ信号処理の実験を行うメジャーな方法としては以下の三つの方法が考えられる。
- PC上のシミュレータを使う
- 汎用DSPの評価ボードを使う
- 専用DSPの評価ボードを使う
PC上のシミュレータはもっとも敷居が低く、入手も容易である。 アマチュアが使えるシミュレータとしてはSciLabがあり、マルチプラットフォームでありフリーである。 この方法はアルゴリズムの開発には向いているが、最大の欠点としてリアルタイム性を欠くことを挙げられる。
汎用DSPの評価ボードとしてはADIやTIのボードがある。 これらについては価格が四万円程度することと、心理的な障壁が問題になると思われる。 TIのボードについては十分な日本語資料があるが、アマチュアにとっては心理的な障壁の高さは無視できないであろう。
専用DSPボードとしてはADIのΣDSPやTIのTASがある。 これらは場合によっては低価格なボードも存在するが、資料が少なく、かつ、日本語の資料が少ない。 また、柔軟性に欠けることも問題である。
Uzumeはこれらのギャップを埋める位置にある。
- 入手が容易なハードウェアを用いる
- 汎用マイコンを使う
- 高性能なDSPへのスケールアップ・パスを持つ
- 日本語の資料を用意する
Uzumeは初めからオーディオ信号処理用のプラットフォームとして開発されているため、覚えなければならないことが比較的少ない。 一方で低価格汎用マイコンを使うため、心理的障壁も少なく入手も容易である。