長南洋一
cyoic****@maple*****
2011年 3月 23日 (水) 20:47:28 JST
長南です。 現在の状況が翻訳のチェックどころではないような気がして、 続きを書いたものの、手元に置いていました。被災なさった 方もいらっしゃるかもしれませんし、もっと緊急で切実な問題に 取り組まざるを得なくなった方もいらっしゃるでしょう。 被災地にボランティアで出かけた方もいらっしゃるかもしれません。 どう考えても、翻訳のチェックは、今のところ不要不急のことです。 でも、書いたものをそのままにしておくのは、中途半端で落ち着かない ものです。ひょっとすると、立花さんはチェックの続きを待って いらっしゃるのかもしれない、などとも考えてしまいます。 そこで、思い切って、ボールを投げてしまうことにします。 立花さんはじめ皆さんには、余裕ができたときにご覧になってください。 そして、納得できないところがあったら、反論してください。 man.1 の翻訳チェックの最終回です。 > .B MANPL > .\"O If > .\"O .B MANPL > .\"O is set, its value is used as the display page length. > .\"O Otherwise, the entire man page will occupy one (long) page. > .B MANPL > を設定すると、表示する 1 ページ当たりの行数として使われる。 > この環境変数を設定しない場合、man ページ全体で (長い) 1 ページになる。 そもそも原文自体が、何を言っているのかわかりません。MANPL=10 と すると、man ページが十行づつ表示されるということなんでしょうか。 そうならないみたいですけれど。 > .B MANROFFSEQ > .\"O If > .\"O .B MANROFFSEQ > .\"O is set, its value is used to determine the set of preprocessors run > .\"O before running > .\"O .B nroff > .\"O or > .\"O .BR troff . > .\"O By default, pages are passed through > .\"O the tbl preprocessor before > .\"O .BR nroff . > .B MANROFFSEQ > を設定すると、 > .B nroff > や > .B troff > の前に実行するプリプロセッサが、この値をもとにして決定される。 > デフォルトでは、man ページは > .B nroff > のまえに tbl 用のプリプロセッサに通される。 原文は the set of preprossers です。set は訳しにくい言葉なので、 このように省略するのも、ひとつの手かもしれません。でも、訳文では、 プリプロセッサを一つだけ指定するように思えるのに、原文を読むと、 複数も可だとわかります。そのへんがやはり気になります。 一例をあげると、 MANROFFSEQ を設定すると、nroff や troff に渡す前にプリプロセッサの 何と何を実行するかが、その値を元にして決定される。 ところで、プリプロセッサの指定は、どうように行うのでしょうか。 MANROFFSEQ="e,g,p,t" などと、コンマで区切るのでしょうか。 それとも egpt と言ったふうに続けて書くのでしょうか。 そのへんをきちんと説明していないのは、原文の落ち度だと思います。 > .B MANWIDTH > .\"O If > .\"O .B MANWIDTH > .\"O is set, its value is used as the width manpages should be displayed. > .\"O Otherwise the pages may be displayed over the whole width of your > .\"O screen. > .B MANWIDTH > を設定すると、その値を表示する man ページの幅として使用する。 > 指定しなかった場合には画面の幅一杯まで使用する。 例の部分です。わたしとしては、原文にある重要な情報を正しく 伝えていれば、正しい訳だと思います。とくに、マニュアルの ような実用的な文章では、実用になる訳ならば、それで十分だと 思います。しかし、同時に、助動詞なようなものも、できるだけ 訳した方がよいとも思っています。このへんは翻訳観の問題ですから、 翻訳者の、つまり立花さんの判断次第ということになると思います。 なお、わたしの試訳は [JM:00129] にあります。 > .B MANPAGER > .\"O If > .\"O .B MANPAGER > .\"O is set, its value is used as the name of the program to use to display > .\"O the man page. If not, then > .\"O .B PAGER > .\"O is used. If that has no value either, > .\"O .B /usr/bin/less -is > .\"O is used. > .B MANPAGER > を設定すると、man ページを表示するプログラムとして使用する。 > 指定しなかった場合には、 > .B PAGER > が使用される。どちらも設定されていない場合には > .B /usr/bin/less -is > が使われる。 端折りすぎです。its value is used as the name of the program to use の value も name も訳されていません。せめて、value はあった方が よさそうです。原文の問題ですが、PAGER が説明なしに出てくるのは、 唐突だと思います。「環境変数 PAGER (の値)]と言った方がよいのでは ないでしょうか。 > .B BROWSER > .\"O The name of a browser to use for displaying HTML manual pages. If > .\"O it is not set, /usr/bin/less -is is used. > HTML版man ページの表示に用いるブラウザ名。 > 設定されていない場合には > .B /usr/bin/less -is > が使われる。 「ブラウザ名」と「ブラウザの名前」のどちらがよいか。たいした違いは ありませんけれど。 > .B HTMLPAGER > .\"O The command to use for rendering HTML manual pages as text. If > .\"O it is not set, /bin/cat is used. > HTMLファイルをテキストに解釈するコマンド。 > 設定されていない場合には > .B /bin/cat > が使われる。 これは、-H オプションに対応する箇所ですね。 > .B LANG > .\"O If > .\"O .B LANG > .\"O is set, its value defines the name of the subdirectory where man > .\"O first looks for man pages. Thus, the command `LANG=dk man 1 foo' > .\"O will cause man to look for the foo man page in .../dk/man1/foo.1, > .\"O and if it cannot find such a file, then in .../man1/foo.1, > .\"O where ... is a directory on the search path. > .B LANG > を設定すると、 > .B man > コマンドはまずその名前のサブディレクトリから man ページを探す。 > したがってコマンドラインから 'LANG=dk man 1 foo' > と打つと、 > .B man > コマンドはまず .../dk/man1/foo.1 を探し、 > 見つからなければ .../man1/foo.1 > を探す。この ... はサーチパスのディレクトリである。 「コマンドラインから 'LANG=dk man 1 foo' と打つと」ですが、 「打つと」というのは、ちょっと表現が舌足らずな気がします。 「打ち込むと」とか「タイプすると」と言うところではないでしょうか。 「サーチパス」でも構いませんが、ほかでは「検索パス」と言っています。 >.B "NLSPATH, LC_MESSAGES, LANG" > ---- (ちょっと省略) ---- > .\"O Note that programs like > .\"O .BR col(1) > .\"O called by man also use e.g. LC_CTYPE. > man に呼び出される > .BR col (1) > のようなプログラムも、たとえば LC_CTYPE > などを使うことに注意すること。 「man に呼び出される col(1) のようなプログラムは、LC_CTYPE と いった変数も (また) 使うことに注意すること」。「も」の位置は こっちではないでしょうか。 > .B PATH > .\"O .B PATH > .\"O helps determine the search path for manual page files. See > .\"O .BR "SEARCH PATH FOR MANUAL PAGES" . > .B PATH > は man ページのデフォルト検索パスの決定に利用される。 > .RB 「 "MAN ページの検索パス" 」 > を参照すること。 原文には「デフォルト」がないのですが、あってもよいのかもしれません。 help を「利用される」と訳したのは、うまいと思います。 > .B SYSTEM > .\"O .B SYSTEM > .\"O is used to get the default alternate system name (for use > .\"O with the > .\"O .B \-m > .\"O option). > .B SYSTEM > はデフォルトのシステム名を得るのに使われる > .RB ( \-m > オプションと一緒に使うものと同じ) これは、原文も訳文も何を言っているのかわかりません。 憶測ですが、「(for use with -m option)」は、alternative system name にだけかかるのではないでしょうか。すなわち、カッコ内は、 「この alternative system name は、-m オプションとともに使う ものである (と同じである)」。カッコ内の訳文もたぶん、そういう ことを言いたいのだと思います。 SYSTEM 環境変数は、他の (オペレーティング) システムの マニュアルにアクセスできる環境で、デフォルトでマニュアルを 調べる他のシステムの名前が何であるかを知るために使用される (システム名は、-m オプションとともに使うものと同じである)。 もう少し工夫して、 SYSTEM 環境変数は、他のシステムのマニュアルにアクセスできる 環境で、デフォルトで調べるマニュアルが、他のどのシステムの ものであるかを知るために利用される (SYSTEM の値として指定する システム名は、-m オプションで使うものと同じである)。 この原文では、to get the default alternative system name の 主語は、man コマンドなのだと思います。だから、「得る、知る」 なのですが、いまいち訳文がピンとこないので、思い切って、 原文から離れてみます。 SYSTEM 環境変数は、他のシステムのマニュアルにアクセスできる 環境で、デフォルトで調べるマニュアルを他のシステムのものに するとき、それがどのシステムのものかを指定する (指示するのに 使用される) (SYSTEM の値として指定するシステムの名前は、-m オプションで 使うものと同じである)。 こんなふうに訳してみると、-m の説明も書き直せそうです。 たとえば、 -m system 他のシステムのマニュアル一式にアクセスできる環境で、他のどの システムのマニュアルを検索するかを指定する。指定に使うのは、 システムの名前である。 # Vine では、4.2 でも 5.2 でも SYSTEM 変数に効果がありません。 # debian で採用している man-db にも -m や SYSTEM があるので、 # そちらで試して、訳文を考えてみました。ですから、man-1.6 などで # 訳文どおりに動作するかどうかは、わかりません。 # /usr/share/man/fr などがある場合、man -m fr man などとやると、 # フランス語のマニュアルが読めるんですね。 > .\"O .SH BUGS > .\"O The > .\"O .B \-t > .\"O option only works if a troff-like program is installed. > .\"O .br > .\"O If you see blinking \e255 or <AD> instead of hyphens, > .\"O put `LESSCHARSET=latin1' in your environment. > .SH バグ > .B \-t > オプションは troff ライクなプログラムがインストールされている > 場合のみ有効である。 「troff ライクな」というのは、他に言い方がないのでしょうか。 「troff やそれと同等な (それに相当する)」とか。 > (訳注: 日本語を使用する場合には > \&'JLESSCHARSET=japanese-euc' または 'LESSCHARSET=japanese-euc' > を使用するために、この方法では対応できない。groff のオプションで > \-Tnippon また \-Tascii を使用すること。) こういうふうに、訳注を独立させるなら、カッコはいらないと思います。 それに、内容が古くなっているのではないでしょうか。 > .\"O .SH AUTHOR > .\"O John W. Eaton was the original author of > .\"O .BR "man" . > .\"O Zeyd M. Ben-Halim released man 1.2, and Andries Brouwer followed up with > .\"O versions 1.3 thru 1.5p. > .\"O Federico Lucifredi <fluci****@acm*****> is the current maintainer. > .SH 著者 > .B "man" > パッケージの原著者は John W. Eaton である。 > Zeyd M. Ben-Halim が man 1.2 をリリースし、引き続いて Andries Brouwer が > versions 1.3 から 1.5p までをリリースした。 > 現在のメンテナーは Federico Lucifredi <fluci****@acm*****> である。 Author は、マニュアルを書いた人と言うより、パッケージ、すなわち プログラムを作った人のことを言っているようですから、「著者」より 「作者」の方がピッタリすると思います。 apropos など、ほかのマニュアルについても同じです。 > .SH 訳注 > 本 man ページの各ファイルのパスは、man-1.6g で > .IP > configure +fhs > .PP > することによって得られたものです。 > 実際のパスはディストリビューションなどによって > 異なっている可能性があります。 この訳注は、前の翻訳が底本にした原文が /etc/man.config になって いるのに対して、翻訳では /usr/lib/man.conf にしたので、付けた のだと思います。今回は、原文、訳文とも /usr/share/misc/man.conf ですから、少なくとも前半は必要ないのではないでしょうか。 後半に付いては、少し書き変えて、残した方がよいかもしれません。 ちなみに、Vine 5.2 の設定ファイルは、/etc/man.config です。 -- 長南洋一